生命は地球の営みが生み出した
「地球システム」という、聞きなれない言葉を使いました。この言葉は、地球自体とそこに息づく生命の成り立ち、営み、関連などを表すために用いました。生態系(エコシステム, ecosystem)という言葉ではカバーできない、地球を含めた系を表しています。
この言葉の意味をひも解くために、まずは地球に誕生した「生命」について考えてみます。
地球生命は、およそ36億年前にはじめて現れたと言われています。地球が誕生してから10億年後のことです。最初の生命は、高温、高硫黄、酸性の環境で誕生しました。生命の基は、地球上の物質です。それが、地球の営みがもたらす様々な環境条件で結び付き、組み合わさり、生命が生み出されました。
生命は、物質を食べ、別の物質を生み出しながらエネルギーを得、自身で増えてゆきます。本当に奇跡のような存在です。

地球の大気の変遷
地球の環境と生命の関わりを語るために、時代をさかのぼります。
地球は、約46億年前に誕生したと言われています。誕生間もない地球は、高温で、大気も100気圧以上と高圧でした。大気には大量の二酸化炭素(※)と地球内部から吹き出した水素、水蒸気、塩素が含まれていました。塩素ガスは水に溶けやすい性質があります。水蒸気が雨となる際、塩素が溶け込み、塩酸の雨が振りました。こうして塩素ガスは、海に溶け込みました。
(※)地球誕生当時の二酸化炭素量には諸説ありますが、最大90気圧相当(今の全大気量の90倍、今の二酸化炭素量の約30万倍)と言われています。
塩酸の雨は陸上の金属イオン(主にナトリウム、カリウムといったアルカリ金属類)を溶かし、海に流出させました。それらの金属イオンは、海を中和しました。中性に近づいた海には、二酸化炭素が溶け、炭酸を含む海水になりました。炭酸イオンは海洋中のカルシウム、マグネシウムイオンと結合して炭酸塩となり、これが今も地球上に大量にある石灰岩となりました。この繰り返しで、二酸化炭素はさらに海に溶け、10気圧程度まで減少したと考えられています。
そして約32億年前(地球誕生から14億年後)に最初の光合成生物が生まれました。約27億年前には、光合成生物が大量発生したと考えられています。それはシアノバクテリア(藍藻)という細菌、いわゆるアオコです。この生命が地球の環境を劇的に変化させました。当時の地球大気には、酸素は存在していませんでした。シアノバクテリアは、二酸化炭素を食べて生き、酸素を次々と生み出しました。

光合成により生み出された酸素は、まず地球上の鉄を酸化して、岩石として閉じ込められました。それが終わると大気中に蓄積し始めました。大気中にたまった酸素は上空でオゾン層を形成しました。これにより、酸素を吸って陸上に生きる生物が初めて生まれました。他方でこれは、高温・酸性の好きな生物、酸素が苦手な生物にとっては、存亡の危機となったことでしょう。
この後も、光合成する多様な植物や、二酸化炭素から石灰石をつくる生物(円石藻など)が生まれ、様々な変化を経て、地球の大気はいまのようになりました。
このように生命は、地球環境を大きく変えてきたのです。
生命の営みは地球の営みの一部
こうして見てみると、地球環境と地球生命は切り離して議論することが出来ないことが分かります。
地球は、その営みの中で生命を生み出しました。もとより生命は、地球システムの一部です。誕生した生命は、生態系というある種の秩序とシステムを形作ってゆきました。そして、地球の環境を劇的に変えました。これら生命の誕生と滅亡、生命の活動が引き起こす環境変化、加えて生命の存亡に配慮なく繰り返される地球の営みは、それら全てを包含する「地球システム」の営みと言えます。
そうした地球システムの営みの中で「人類」という種が生まれました。700万年前のことと言われています。
